活動報告 2015年国際日本語ディベートキャンプin台湾交通大学

Ⅰ 概要

日 程: 2月27日(金)~3月1日(日)

場 所: 台湾国立交通大学

コース: 初級「交通大学は夜間のインターネットの使用を禁止すべきで  ある」中級「世界は捕鯨を禁止すべきである。是か非か。」


Ⅱ 報告、および気づいた点など

今回のディベートキャンプでは、NADE(全国教室ディベート連盟)より佐藤先生(創価大、主に初級を担当)、後藤先生(主に中級を担当)を講師に迎えて開催され、台湾から台湾国立交通大学、台湾真理大学、日本からは九州大学(QDC)、広島大学、北海道大学、創価大学、名城大学のメンバーが集まった。

今回のディベートキャンプにおいて、QDCやその他日本の学生は「初級コースのフォロー」という形で参加した。初級コースでは初日、冒頭でアイスブレイキングを行ったのちディベートの概要の説明、その後グループに分かれてメリット・デメリットのブレーンストーミングを行った。2日目には反駁や再反駁について学んだのち、グループにて立論や反駁・再反駁のブリーフを準備し、読み合わせを行い、最終日に3試合のラウンドに臨んだ。一方、中級コースにおいては「4月に開催される大会に向けての練習」という目的を持って、ブレーンストーミング、立論・ブリーフ作成、練習試合を行った。

(筆者が主に初級コースのフォローについていたため、初級コースを中心に書くが)全体を通して座学ではなくグループワーク中心の活動ができたため、日本語が不自由だったり、議論が思いつかなかったり、何をすれば良いのかいまいちわからない学生さんにも細かいフォローを行うことができた。また、グループワークを通じて相互に協力して、「交流」することもでき、本講座の趣旨にかなうものとなったと言える。特に脱落者(もうついていけない、ということで途中から来なくなる者)が生じることなく、みんなが一致団結でき試合に臨むことができたのはこのためだろう。試合についても、(日本語がたどたどしい部分は多少散見されたものの)ラウンドを重ねるごとに徐々に双方向的な議論ができるようになっていたことは特筆すべき点であり、フォローした身として素直に嬉しいことであった。

一方で改善すべき点もいくらかあった。まず、3日間という日程はやや短かったと思う。日本語が第二、もしくは第三言語、第四言語(彼らの母語はMandarinであり、さらに多くの人は福建語系の台湾語もしくは客家語を話す上、第1外国語として英語を学んでいる。また第2外国語として日本語を必ずしも習っているわけではない彼らにはかなり大変だったと思った。)である彼らには(慣れている人は別として)、日本語でコミュニケーションをとるのは至極大変なことであると思う。よって、言葉一つ一つからゆっくり説明しなければならず、相手の理解度に合わせて進めていく等、かなり細かなサポートが必要であった。今回、比較的細かなサポートはできたと言えるが、それでもやはり試合の時点でまだ少々自分が言うべきことをしっかり理解できていない学生さんも見受けられた。また、チームでのコンセンサス(たんに立論だけでなく、反駁や再反駁に関しても)をしっかり取っておいたほうが良かったと思う。4日間くらいの日程でゆとりを持って、もう少し準備に時間をかけても良かったと思われる。また、チームでフォローにややばらつきがあった感が否めない。それは、フォロワーの人数がチームによって異なったためである。また、どうしてもわからないことに関しては、中国語なり英語なりで説明しないといけないことにもなる。幸い、筆者がフォローしたチームは私を含めフォロワーが2人いたが1人のチームもいたし、北京留学経験がありMandarinを不自由なく操る方もいらっしゃったし、筆者も英語ディベートをしているのでなんとか英語による説明ができた。また、2人いたため負担もある程度分散された。しかし、他のチームではフォロワーの方が苦労されていたのを目にした。次年度以降は日本からの参加者を増やし、より細やかなフォローができるようにしても良いかと思う。(日本からの参加者の数を増やせば、それだけ負担も分散するし英語や中国語を話せるフォロワーの数も自然と増える。また、「国際交流」の観点からも、日本からの参加者をさらに増やすことが望ましい。)

また、初日の中級クラスのブレーンストーミングにおいて自分が立つべき肯定側のスタンスに疑問を呈してしまう学生さんもいた。例えば、「捕鯨を禁止すべき」というスタンスで「クジラが激減している」と主張すべきところで、資料を調べた際、ミンククジラはそんなに減っていないということで混乱している学生さんもいた。資料はあくまで論証の際の付随物であり、まずは主張の骨格を作っていくことが大事である、ということを身につける必要があろう。

以上のように改善すべき点もあったものの、今回のディベートキャンプは個人的に大成功であったと思う。なぜならば、皆が楽しめたからである。グループワークだけでなく、放課後に一緒に食事や観光に行ったり、レクレーションをおこなったり、また全日程が終わった翌日には1日観光ツアーを行ったりして相互の交流や友情を深めることができた。最終日の試合では皆が全力で真摯に臨み、その喜びを分かち合うことができた。また、佐藤先生、後藤先生の親切で細やかなご指導のおかげで、皆がディベートを楽しむことができた。両氏には大変感謝申し上げたい。来年も機会があれば、是非とも参加したいと思う。

Ⅲ 今後の展望

今回のディベートキャンプは「国際日本語ディベートキャンプ」という趣旨にもとづき開催されたが、実質的には「日台ディベート」であった。今後は是非とも他の国の皆さんにも参加してほしいと考えている。そのためには、「なぜ日本語圏ではない台湾で国際日本語ディベートキャンプを行うことに意味があるのか」ということを再定義するべきであろう。英語に関するイベントであれば、非英語圏諸国が開催地でも自ずと人は集まるものであるが、日本語の場合そうはいかない場合が多い。もちろん、日本人の参加者を増やすことでより、「日本語ディベートキャンプ」らしさを増やすことも重要であるが、それだけでなく日本語話者同士例えば、台湾人と韓国人が日本語でディベートをすることも重要であり、「国際交流色」を増やすなどの試みも大事となるであろう。

冨田 健司