著書紹介
大津隆広(編)『データを用いたことばとコミュニケーション研究の手法』ひつじ書房, 2023年10月発行
データを用いた量的・質的分析を通して、言語行動の傾向や言語学的事実、教育的知見の発見もあれば、データの中身を考察することでことばやコミュニケーションに関する仮説が確証されることもあります。本書では、書き言葉や話し言葉、あるいは韻律を含めたコーパス、映像・音声などのマルチモーダルコーパス、自主構築コーパスなどのデータを用いたことばやコミュニケーション研究の多角的な手法を提示しています。語彙や構文、会話と語り・文法形式、会話表現や談話標識、文法化や言語接触、話し手と聞き手の相互行為的側面など、ことばとコミュニケーションに関わるさまざまな側面に関して、各論考の冒頭で研究の概要とキーワードを示したのち、研究の意義や研究方法、使用したデータのタイプや内容の説明を加えています。
藤井聖子・内田 諭 著『フレーム意味論とフレームネット』研究社, 2023年5月発行
本書は、認知意味論の中で主要な理論の一つであるフレーム意味論について解説したものです。フレーム意味論はフィルモア(Charles J. Fillmore)によって提唱された言語理論で、世界や言語に関する知識を「フレーム」として体系化し、言語の意味記述を目指すものです。フレームネットは、その理論を応用した「フレームの辞書」で、自然言語処理の分野などでも広く用いられています。主要な理論でありながら、国内外で本格的な入門書はこれまでになく、体系的にまとめたものは本書がはじめてです。本の前半ではフレーム意味論、フレームネット、構文理論を概説しています。後半では、具体的な言語分析の事例や、辞書記述・語学教育等への応用事例など、フレーム意味論の新展開を示しています。